1Passwordのアカウントは、米国、カナダ、EUの3つのリージョンのどれかに作ります。日本のリージョンはありません。リージョンはアカウントを作るときに決まり、後から自動で移ることはありません。また、リージョンによって使えない機能があり、選んだリージョンの外で扱われるデータもあります。このページでは、3つのリージョンで決まること、リージョンで変わる機能と構成、選んだリージョンの外で扱われるデータ、日本の組織の選び方、リージョンを変えるとき、審査と法務に渡す材料を説明します。
3つのリージョンで決まること
リージョンは、1Password.com(米国)、1Password.ca(カナダ)、1Password.eu(EU)の3つです。選んだリージョンで、データを置く国と、サインインアドレスやEvents APIの宛先の末尾が決まります。
| リージョン | データの保管場所 | サインインアドレスの末尾 | Events APIの宛先 |
|---|---|---|---|
| 1Password.com | 米国 | 1password.com | https://events.1password.com(Business)、https://events.ent.1password.com(Enterprise) |
| 1Password.ca | カナダ | 1password.ca | https://events.1password.ca |
| 1Password.eu | EU | 1password.eu | https://events.1password.eu |
どのリージョンでも、1Password社の従業員はアイテムの中身を見られません。暗号化は端末の中で行われ、サーバーに届くのは暗号化されたデータだけだからです。リージョンが決めるのは、この暗号化されたデータと、暗号化されずに持たれる氏名やメールアドレスなどの情報を、どの国のサーバーに置くかです。暗号化されない情報の範囲は暗号化とゼロナレッジの仕組みで扱います。
米国以外のリージョンでは、サインインの画面でリージョンを選び違えると、正しいアカウントパスワードでも入れません。社員向けの手順書には、自社のリージョンとサインインアドレスを明記しておきます。
リージョンで変わる機能と構成
リージョンによって、使える機能と取れる構成が変わります。
| 対象 | リージョンによる違い |
|---|---|
| Extended Device Compliance | 米国のリージョンのアカウントでだけ使える。カナダとEUのアカウントでは使えない |
| 親子の構成 | 親と子は同じリージョンに置く。紐づけられるのは親と同じリージョンのアカウントだけ |
| MSP | MSPアカウントと管理対象企業は同じリージョンに置く |
| SaaS Manager | 米国とEU(ドイツ)の2つの環境がある。カナダの環境はない |
SaaS Managerの環境は、Enterprise Password Managerのリージョンとは別の仕組みです。カナダのリージョンを選ぶと、2つの製品でデータを置く国がそろいません。Extended Device Complianceの位置付けはDevice Trustと組み合わせると何ができるかで扱います。
一方で、社員の端末の側には制約がありません。アプリには、リージョンの違う複数のアカウントを同時に追加できます。
選んだリージョンの外で扱われるデータ
保管庫のデータは選んだリージョンに置かれます。ただし、機能によってはデータが別の場所で扱われます。
| 機能 | 扱われる場所 |
|---|---|
| 共有リンク | 共有したアイテムのコピーは、リージョンに関係なくフランクフルトに置かれる |
| 自動プロビジョニング | アカウントと同じリージョンで動く。EUのアカウントならEUの中 |
| Google Workspaceとの同期 | 自社のGoogle Cloudのプロジェクトのus-central1で動く |
| 自己ホスト型のSCIM Bridge | 自社が選んだクラウドのリージョン。国内のリージョンも選べる |
| 漏洩したパスワードの照会 | パスワードのハッシュの先頭5文字だけを外部のサービスに送る |
| アイコンの自動取得 | 保存しているサイトのドメインをアイコンのキャッシュサーバーに問い合わせる |
共有リンクは、保管場所の審査で最も見落とされやすい機能です。使わない組織は、機能を絞っておくと説明が簡単です。設定はアイテムの共有と共有リンクの統制で扱います。
【注意】 カナダとEUのアカウントでも、アプリは
*.1password.comなどの共通のドメインに接続します。通信先のドメインの国と、データの保管場所の国は一致しません。ネットワークの記録だけを見て保管場所を判断すると、事実と食い違う回答になります。通信先の一覧はネットワーク要件とプロキシー環境で扱います。
日本の組織の選び方
国内に保管するという要件は満たせません。その前提で、組織の状況に合わせて3つから選びます。グループ会社で要件が割れる場合は、構成と一緒に決めます。リージョンが違う会社は親子の構成にできないため、全社を1つのリージョンにそろえるか、別々のアカウントとして運用するかの選択になります。考え方はテナント構成の選択(単独、親子、グループ会社、MSP)で扱います。
米国を選ぶ
特別な事情がなければ、米国を選ぶのが基本です。Extended Device Complianceを使える唯一のリージョンで、SaaS Managerにも米国の環境があります。Unified Accessの製品を後から広げていく前提なら、制約が最も少なくなります。
EUを選ぶ
EUに拠点や顧客があり、GDPRへの対応を説明する必要がある組織の選択肢です。SaaS ManagerもEUの環境でそろえられます。代わりに、Extended Device Complianceは使えません。
カナダを選ぶ
日本の組織にとって、カナダを選ぶ固有の利点は多くありません。SaaS Managerと保管場所の国がそろわず、Extended Device Complianceも使えません。
リージョンを変えるとき
リージョンを変えるには、新しいリージョンにアカウントを作り、アイテムを移します。
- 新しいリージョンでアカウントを作ります。手順はアカウントの作成とサインインアドレスの決定で扱います。
- グループ、ポリシー、SSO、プロビジョニングを作り直します。
- 社員を招待し、元のアカウントと同じ保管庫にアクセスできるようにします。
- 共有保管庫のアイテムを新しいアカウントにコピーします。共有保管庫は一度移せば、各自がコピーし直す必要はありません。
- 社員が、自分の従業員保管庫のアイテムを自分で移します。
- 各端末で元のアカウントからサインアウトし、最後に元のアカウントを削除します。
コピーには制限があります。ファイルはリージョンをまたいでコピーできないため、いったん端末にダウンロードし、新しいアカウントでアップロードし直します。ファイルを添付したアイテムとカスタムアイコンを付けたアイテムは、添付やアイコンを外してからコピーし、コピー先で付け直します。関連アイテムのリンクは、コピーした後に貼り直します。
【注意】 従業員保管庫の中身は、管理者が代わりに移せません。社員一人一人の作業になるため、移行の期限と手順を先に配ります。サインインアドレスも変わるので、Emergency Kitは全員が取り直しになります。
審査と法務に渡す材料
リージョンの選択は、個人情報保護法や取引先の審査で必ず問われます。法務には、データを置く国(上の表のリージョンの外で扱われるデータを含む)、1Password社が暗号化せずに持つ情報、中身を復号できない仕組み、第三者による監査の報告書の4つを渡します。法令上の整理は、これらの事実をもとに社内の法務と行ってください。報告書の入手は第三者による監査と報告書の入手、回答書の組み立てはセキュリティー審査への回答の作り方で扱います。
【運用のポイント】 リージョンは、アカウントを作る前に法務や海外の拠点も含めて合意を取ってください。試しに作ったアカウントがそのまま本番になることはよくあるため、試用でも本番と同じリージョンで作るのが安全です。