Unified Accessは、1Passwordが提供する5つの製品をまとめたプラットフォームの名前です。社員が使うパスワードの管理から始まった1Passwordは、いまではSaaSの利用状況、端末の状態、クラウド基盤の特権、自動で動く処理に渡すクレデンシャルまでを扱います。これらを個別の製品として売るだけでなく、同じ考え方でつながる1つの仕組みとして示したものがUnified Accessです。製品の名前を覚える前に、何を対象にし、どういう順で守るのかをつかんでおくと、後の製品選びと設計で迷いにくくなります。このページでは、対象にする3つのアイデンティティー、発見・保護・監査の考え方、5つの製品の構成、SSOやIDプロバイダーとの違い、契約の単位、本ガイドでの扱いを説明します。
対象にする3つのアイデンティティー
Unified Accessは、業務のシステムにアクセスする主体を3つに分けて考えます。ここでいうアイデンティティーは、クレデンシャルを使ってシステムに入る主体のことです。
人
社員、外部の委託先、管理者です。ログインのパスワード、パスキー、2要素認証のコード、共有のアカウントなど、人が覚えたり入力したりするクレデンシャルを扱います。日本の組織が最初に向き合うのは、ほぼこの領域です。表計算の台帳で共有しているパスワード、SSOに入っていない業務のサイト、退職した人が知っているままのアカウントが典型です。
AIエージェント
社員の代わりにサイトへサインインしたり、APIを呼び出したりするAIの仕組みです。社員が自分の判断で使い始めることが多く、どのクレデンシャルを誰が認めて使わせたのかが残りにくい領域です。Unified Accessは、AIエージェントに渡すアクセスを作業の範囲に絞り、作業が終われば残さない方向で設計されています。
マシン
CI/CDのパイプライン、スクリプト、サーバーで動く処理です。APIのトークンや鍵が設定ファイルに平文で置かれたまま、長く使われ続けることがよくあります。必要になった時点で、その処理に許された分だけを渡す仕組みが用意されています。
3つは独立していません。社員が作った鍵をスクリプトが使い、そのスクリプトをAIエージェントが動かす、という連鎖が普通に起きます。Unified Accessが3つをまとめて扱うのは、この連鎖のどこかで記録が途切れると、後から誰の責任だったのかを追えなくなるからです。
発見、保護、監査の考え方
Unified Accessは、アクセスの管理を3つの段階で組み立てます。
| 段階 | 何をするか | 例 |
|---|---|---|
| 発見 | 組織の中にあるアクセスとクレデンシャルを見つける | 端末に平文で置かれた鍵、IT部門が把握していないSaaSやAIのツール |
| 保護 | 見つけたものを保管庫に移し、使える人と範囲を決める | 共有のアカウントを会社の保管庫で管理する、特権を必要なときだけ与える |
| 監査 | 誰が、何が、いつ、どのクレデンシャルを使ったかを記録する | 監査ログ、SIEMへの送信 |
導入の順序もこの3つに沿って考えると整理できます。見えていないものは守れず、守っていないものは記録の対象になりません。最初の段階で発見を省くと、保護した範囲の外に重要なクレデンシャルが残ります。
5つの製品で構成される
Unified Accessは次の5つの製品で構成されます。
| 製品 | ひとことでいうと |
|---|---|
| Enterprise Password Manager | 人、マシン、AIエージェントのクレデンシャルを保管庫で守る土台 |
| SaaS Manager | SaaSとAIのツールの利用を見つけ、アクセスと費用を管理する |
| Device Trust | 端末の状態を確かめ、条件を満たさない端末からのアクセスを止める |
| Privileged Access | クラウド基盤やデータベースの特権を、必要なときに必要な分だけ与える |
| Credential Broker | 自動で動く処理とAIエージェントに、実行時にクレデンシャルを渡す |
中心にあるのはEnterprise Password Managerです。ほかの4つは、この保管庫が守る範囲を外側へ広げる役割を持ちます。製品ごとの分担は5つの製品の役割分担で扱います。
SSOやIDプロバイダーとの違い
多くの組織は、既にIDプロバイダーとSSOでサインインを一元化しています。Unified Accessはこれを置き換えるものではありません。SSOが守るのはサインインの瞬間で、サインインした後にクレデンシャルがどう使われるかは見ていません。SSOに対応していないサイト、共有のアカウント、端末に置かれた鍵、処理に埋め込まれたトークンは、IDプロバイダーの管理の外にあります。
Unified Accessが受け持つのは、この管理の外にある部分です。IDプロバイダーとは競合せず、接続して使います。社員の追加と削除はIDプロバイダーから受け取り、1Passwordのロック解除にIDプロバイダーのサインインを使うこともできます。接続の方式は手動、自動プロビジョニング、SCIM Bridgeの比較とUnlock with SSOを使うかどうかの判断で扱います。
契約の単位
Unified Accessは、プラットフォームとしてまとめて契約することも、製品ごとに契約することもできます。全ての製品を最初からそろえる必要はなく、Enterprise Password Managerだけで始めて、必要に応じて足していく形が取れます。どの製品から始め、どう広げるかは導入の順序と広げ方で扱います。
契約の構成と価格は組織の規模と必要な機能で変わります。正規販売代理店(デジタルアクセルズ)にご相談ください。
本ガイドでの扱い
本ガイドは、Unified Accessの全体像を示したうえで、Enterprise Password Managerの導入と運用を中心に扱います。SaaS Manager、Device Trust、Privileged Access、Credential Brokerは、それぞれの概要ページで位置付けと前提条件を説明します。
【運用のポイント】 社内の検討資料では、製品名よりも「人、AIエージェント、マシンのどこを守るか」と「発見、保護、監査のどこまで進んでいるか」の2軸で現状を書くと、経営層や監査の担当者に伝わりやすくなります。製品の選び方はどの課題にどの製品が対応するかで扱います。