何をどのくらいの頻度で保護し、どれだけ保持するかを設計します。技術的な設定の前に、業務要件から必要な水準を決めてください。
保護対象の洗い出し
まず「失うと業務が止まるデータ」を特定します。
| 分類 | 例 | 優先度 |
|---|---|---|
| 業務の中核データ | 基幹システムのデータベース、会計データ | 最優先 |
| 共有ファイル | 部門共有フォルダー、プロジェクト資料 | 高 |
| 個人の業務データ | 各自の作業ファイル | 中 |
| 再取得できるもの | インストーラー、参照用の資料 | 低 |
4番目は保護の対象外にできます。全てを守ろうとすると容量と費用が膨らみます。
見落とされやすいのは、クラウドサービス上のデータです。SaaSのデータは提供事業者が保護していると思われがちですが、利用者の誤操作による削除は対象外のことが多くあります。
RPOとRTOの決め方
バックアップ設計の中心となる2つの指標です。
| 指標 | 意味 | 決める内容 |
|---|---|---|
| RPO | どこまで戻れるか | バックアップの頻度 |
| RTO | どれだけ早く復旧できるか | 方式と保存先 |
RPOを1時間にするなら、バックアップは1時間ごとに取得する必要があります。RPOを24時間で許容できるなら、日次で足ります。
RTOを短くしたいなら、ローカルに保存し、イメージバックアップを使います。クラウドからの復元は、データ量によっては数時間から数日かかります。
現実的な決め方は次の通りです。
- 業務部門に「何時間前の状態まで戻れれば業務を続けられるか」を聞く
- 「復旧までどれだけ待てるか」を聞く
- その要件を満たす構成の費用を試算する
- 費用と要件のバランスを調整する
3番目を省くと、実現不可能な要件が決まります。「1分たりとも失えない」「即時復旧が必要」という要求は、それに見合う投資とセットでなければ成立しません。
頻度の設計
対象の性質に応じて頻度を変えます。
| 対象 | 頻度の目安 |
|---|---|
| 基幹サーバーのデータ | 1時間ごと、または日次 |
| ファイルサーバー | 日次 |
| クライアント端末 | 日次、または数日ごと |
| 変更が少ないサーバー | 週次 |
全てを最高頻度にする必要はありません。変更されないデータを高頻度で取得しても、容量を消費するだけです。
世代管理と保持期間
保持期間は、次の観点から決めます。
| 観点 | 影響 |
|---|---|
| 誤削除に気付くまでの期間 | これより長く保持する必要がある |
| 法令や契約上の要件 | 定められた期間を満たす |
| ランサムウェアへの備え | 感染前の状態が残っている必要がある |
| 費用 | 長いほど高くなる |
3番目が近年重要になっています。ランサムウェアは感染してから発覚するまでに時間があることが多く、直近数日分しか保持していないと、既に暗号化された状態しか残っていない事態になります。
【運用のポイント】 「直近7日分」だけの構成は避けてください。日次を1週間、週次を1カ月、月次を1年、といった多層の保持設計が現実的です。容量は増えますが、実際に助かるのはこの古い世代です。
帯域の制御
バックアップは大量のデータを転送します。業務時間中に実行すると、回線を圧迫します。
対策は次の通りです。
- 実行時間帯を業務時間外にする
- 転送速度の上限を設定する
- 拠点ごとに実行時刻をずらす
- 初回の取得は特に時間がかかるため、計画的に実施する
4番目を軽視しないでください。初回は全データを転送するため、日常の数十倍の時間と帯域を消費します。週末に実施するなどの配慮が必要です。
除外設定の考え方
保護しなくていいデータを除外すると、容量と時間を節約できます。
| 除外の候補 | 理由 |
|---|---|
| 一時ファイル、キャッシュ | 再生成される |
| ダウンロードフォルダー | 再取得できる |
| 動画や音楽の個人ファイル | 業務データではない |
| 仮想マシンのイメージファイル | 別途保護する |
| ページファイル、休止状態ファイル | 復元に不要 |
除外しすぎると必要なデータが守られません。除外設定は記録に残し、定期的に見直してください。
設計内容の記録
決めた内容は文書に残してください。次の項目を含めます。
- 保護対象と除外対象
- 方式と保存先
- 頻度と保持期間
- RPOとRTOの目標値
- 復元テストの実施時期と担当
この記録がないと、担当者が変わった時点で「なぜこの設定なのか」が分からなくなります。NinjaOne Documentationに保管する方法はNinjaOne Documentationの概要を参照してください。